~お年頃~

3/6
前へ
/11ページ
次へ
物心ついた時には、パパにドレスのような可愛い洋服や、靴を買って貰っていた。 「咲子は、可愛い女の子だから」 という言葉が、口癖のようだった。 「あの可愛い女の子が、今はこんなですってか……」 咲子は、自嘲気味に笑い、お茶を啜った。 その可愛い娘は、おっさん化しています。 結婚どころか、彼氏も居ない。 有名化粧品会社に勤める彼女の、休日はおっさん。 星になったパパは きっと――― 「笑ってるんだろうな」 ポツリと呟くと、キッチンに立つ母親が声をかける。 「というか、咲子。彼氏とかは居ないの?」 「在り来たりだけど、仕事が恋人です、とでも言っておきましょうか」 ハハハと笑う咲子に、母親は苦笑いを見せる。 「最後に彼氏が居たのは、いつなの?」 「高1」 「こ……」 絶句する母親を無視し、テレビのチャンネルを替える。 《巷で流行りの婚活特集!》 ジャジャーンという効果音に、テレビの中で歓声が上がる。 「婚活……」 咲子も、結婚に憧れていないわけではない。 好きな人と結婚して、子供が生まれて、幸せな日々を送る。 「んだけど彼氏が居ないんだよなー」 お腹をポリポリと掻きながら、欠伸を噛み殺す。 テレビでは、女性のたしなみや、マナー、コーディネートをやっている。 《ダイエット等、自分磨きでこんなに美しくなりました》 美しく変身した女性が、テレビに出ているのを、咲子は、ぼーっと見ていた。 .
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加