「笑えてますか?」

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―――――――― ちょうど、夕暮れ時。 目の前にはオレンジ色の世界。 「神楽、ちょっと来いよ。」 「うん…?」 総悟に手を引かれ、 公園から少し離れた 河原にやって来た。 そこには一面に 白い花が咲いていた。 オレンジ色に染まっている、 白い花…。 「きれいアル…!!」 神楽は目を輝かせる。 「だろ? 俺もよくここで、 この景色をみてたんでィ…。」 「サボりがてらに、ネ!」 そういい、神楽は総悟をみて ニヤリと微笑む。 「ははッ、そのたびに 土方さんから怒られてたなァ。 …本当、 毎日毎日飽きもしねェで…。」 総悟は切なげに微笑んだ。 神楽もその表情を見て俯き、 そして総悟の横顔をみつめた。 「ねェ、総悟…。」 「ん?何でィ。」 「なんで私と別れたか、 聞いてもいいアルか?」 少し声が震えた。 総悟の横顔は あまりにも儚くて、 なにか話しかけなければ消えていってしまいそうだった。 神楽の質問に総悟は目を 見開いて神楽を見つめたが、 すぐに視線をそらした。 「俺のこと、 いまさらなんだって… 思ってるか?」 「そんなこと…」 「…わかってる。 自分でも都合良すぎなのは わかってまさァ。 でも、よ…。」 総悟は唇を強く噛んだ。 …わかってたはずなんだ。 神楽から恨まれるのは。 ちゃんと考えて、それでも 俺はお前と離れる道を選んだ。 なのに、またお前に会いたくなったりして…。 「俺は、お前が好きなんだよ。」 突然の告白に、 神楽は顔を真っ赤にする。 「総悟…」 「でも俺は、もうすぐ死んじまうから…。お前を幸せに、 してやれねェから…。」 言い終えて、総悟は下を向く。 それを神楽は 黙って見つめていた。 “死ぬ”…。 ねぇ総悟、 私…なんとなくわかってたよ。 総悟の細くなった腕。 小さくなった背中。 マヨの赤くなった目。 銀ちゃんの青ざめてた顔…。 そのすべてが、 私に語りかけてきたよ。 だけど…気付きたくなかった。 勘違いであって欲しかった。 ねぇ、そんな悲しそうな顔 しないで…?  
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