「笑えてますか?」

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  三日前。 神楽に別れを告げた。 神楽のためだと 自分に言い聞かせ、 震える手を強く握りしめた。 屯所まで、俺は一歩も 止まらず走りつづける。 思い出すのは、 さっきの神楽の 泣き顔だけだった。 結局、神楽を… 泣かせてしまった。 ―――――――― 「総悟。」 道場で稽古をしていると、急に土方さんに声をかけられる。 ついでに休憩しようと思い、 近づいていく。 「なんですかィ?」 「チャイナ娘と、 …別れたらしいな。」 「…。」 土方さんから神楽の名前が出てくるなんて、意外だった。 視界がぼやける…。 稽古のしすぎ、ですかねィ? 「お前、あいつに 本気で惚れてただろ?」 「…へい。」 「…今も好きなんだろ?」 “好き”…。 今も神楽が大好きでさァ。 でも、俺には 言えねェ理由があるんでィ…! 「―――っ!!」 突然腹に激痛が走る。 息が上手くできなくなる。 自分の体が前に 傾いていくのがわかった。 「総悟?…おい、総悟っ!!」 土方さんの声が遠く聞こえる。 …なんとなくわかってた。 俺はもうすぐ 死んじまうんだって。 俺じゃあ、神楽を 幸せにできないんだって…   
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