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「んあー…、ごめん、みつ」
彼は後頭部をがしがしと掻いて、ばつの悪そうな顔をした。
なあに、なにが、ごめんなの。
「五月(さつき)と、約束してっから」
彼にとっての、五月ちゃんは、掛け替えのないものだった。
容姿も整っているけど、それだけじゃない。彼女は、見栄っ張りで、意地っ張りの、少し弱い巡に対して、母親のように包み込む力があるのだ。
そこに恋人に向ける愛情が加わって、2人は結ばれた。
巡は勉強もそこそこ出来て、中学高校とバスケをやっていたから運動神経も良いし背も高い。
五月ちゃんは、決してクラスのリーダーのような、そんなタイプではないけれどいつも控えめで、でもとても優しくて頭が良い。
2人は周りが羨むような、理想的なカップルだった。
そして、その片割れの愛人である僕も、2人は憧れの存在だった。
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