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どうして、どうして僕じゃ駄目なのだろう。
男だから?僕が、男だから、公の場で僕のことを恋人だと自慢できないから?
きっと、そうなのだと、否、絶対そうなのだと、思いたかった。
だけど、巡はそんな偏見のある男でもないし、事実僕の相手をしてくれる。
完全に、僕より五月ちゃんの方を愛しているからなのだ。
どうして、どうして。それなのにどうして僕の相手をしてくれるの?
あなたにどれだけ愛を捧げても、応えてくれる訳でも無いのに。
僕は、虚しいだけのそれを、繰り返すばかりで、救われることなんて絶対ないのに。
嗚呼、これはただの被害妄想?
我ながら、女々しいと思う。
「じゃ、俺、次の講義あるから」
そう言って、椅子を立った巡を見上げる。
「待って、」
ん?と、振り返った巡を、物欲しそうに見つめて、声を出さずに囁いた。
あいしてるよ
「じゃあね、巡」
別れを告げて、僕は返事のしない巡を1人そこに置き去りにして、講義室を後にした。
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