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「あ、みっちゃん!こっちこっちー!」
いつもながら込んでいる食堂の奥から、生徒たちの話し声に混じって高くもなく、低いわけでもない良くとおる声が聞こえてきた。
「五月ちゃん、気使わなくても良かったのに」
「なに言ってるの、折角今日は学食で食べようと思ってたんでしょ?そっちこそ、気使うなって」
五月ちゃんは、未だ黙ったままの向かいに座る巡の隣を指差して、そこ空いてるから座って、と、僕が腰を下ろすように促した。
今、巡はどんな気持ちなんだろう。目の前には彼女がいて、隣には、男の恋人、否、愛人がいて。
巡の頭の中を覗いてみたい。
とても、面白そうだ。
「でも、2人を邪魔しちゃわるいだろ?」
言葉に皮肉を込めて、巡に視線を向けた。
彼は、どこか申し訳なさそうな顔をしていて、自分が彼に向かって悪いことをしているような気持ちになった。
二股をかけられているのは、僕なのに、ねえ。
「なんだよ、それより、みつだって早く彼女作ればいいだろ」
「・・・・」
何を、言い出すんだこの男は。
僕が、女性に対して無能なことをわかっていながら、僕のことに、手を出しておきながら。
なんで、僕はこんな男に惹かれているのか。
ちょっと、なにきれてるの、
きれてねーよ
そんな会話が、聞こえた気がする。
「みっちゃん、あんた顔良いんだからすぐ彼女なんてゲットできちゃうよ」
そうやってやわらかく笑う、太陽みたいな彼女の笑顔が眩しくて、どうしようもなく泣きたくなった。
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