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結局、大鳥に言いくるめられた榎本の不機嫌が原因で、軍議は一時中断となった。
一番に部屋を飛び出したのはもちろん榎本で、途中椅子に足を引っかけつまづいていた。
それを見ていないと言わんばかりに思いきり目を反らし出ていく男たち。
残ったのは、いまだ夢の中の土方と微笑みを絶やさない大鳥だけだった。
「トシさん、寝てる?」
榎本がしようとしたように下から覗き込むと、彼の予想通り目を瞑る鬼の寝顔がそこにはあった。
やはり自分の判断は正しかったと一人満足そうに頷いていると、
「ん……」
閉ざされていた土方の瞼が、ゆっくりとあがった。
「あぁ、起きました?」
寝惚けているのか、大鳥の声は聞こえていないようだ。
部屋の中をゆっくりと舐めるように眺めた土方の視線は、やがて左上にある優しげな笑顔を捉える。
「……こんど、さん?」
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