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いつも、笑顔だったんだ。
仲間が死んじまった時も、
とっつぁんに怒鳴られた時も、
伊東に騙された時も、
あの日、俺があんたを止めた時も……。
『近藤さん、切腹なんて止めてくれ』
『そうっすよ局長!』
『局長!』
『……すまんな』
『近藤さんッ!』
腹に突き刺そうとした小太刀を、アンタから奪ったのは俺だったな。
アンタは悲しそうな瞳をして、俺を見たんだ。
『トシ……』
『侍らしく潔く、なんて考えてねぇだろうな?』
『……』
『今はそんなのいらねぇ!今必要なのは、侍らしく最後まで将軍に仕えることだろうが』
敵に囲まれたのは分かってた。
このままじゃダメなことも、分かってた。
でもだからって
大将が、あんたが死ぬ所なんて
『頼むよ、近藤さん……』
『……分かった』
俺が見たいのは、あんたの死体じゃない。
あんたの 笑顔だ。
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