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はっと我を取り戻した大鳥に取り繕ったような笑みを向けられ、かと思えばよく寝ていたね、なんて言葉を吐かれる。
嫌味か、と目を細めるが、この男はにこにこと笑うばかりである。
あの人と同じように、誰もが着いていきたくなるような笑みで。
「君が寝ている間に榎本さんの機嫌が悪くなってね。仕切り直すことになったよ」
原因が十中八九自分にあると察した土方は、恐らく庇ってくれただろう大鳥に軽く頭を下げた。
「すまなかった」
「いえいえ、榎本さんに文句を言われるのは慣れています」
「……仕切り直すっつうことは、また明日もあるんすか?」
「多分ね。まったく……戦は疲れるばかりで、早く家に帰りたいよ」
頭をポリポリとかき、わざとらしく溜め息をつく。
家に帰りたいなど、榎本が聞いたらどれだけ怒るだろう。
根性無しと罵られるかもしれない。
それでも、帰る場所がある大鳥にしたら一刻も早く蝦夷地など出たいのだろう。
「そうですね」
苦笑を一つ、くれてやった。
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