4/10
前へ
/22ページ
次へ
中島降、それが男の名前だ。 中島は土方の隣に行くと、足元に置いてあるビールを見た。 中身は、あまり減っていなかった。 「……なんだよ」 その様子を見ていた土方の不機嫌そうな声を聞き、慌てて顔を上げた。 彼の頬は僅かに赤くなっていて、酒弱かったっけ?と首を傾げたくなった。 「で、なんだ?敵さんになんか動きでもあったか?」 「あっいえ、そういうわけでは……。榎本さんが軍議をしたいから呼んでくるように、と」 「ちっ。何が呼んで来いだ。どうせ俺が行ったって意見なんか聞き入れねぇくせによ」 土方は幕府軍の中では軽視されていた。 江戸での活躍は知っているだろうに、自分のプライドのために素直に土方を受け入れようとしないのだ。 ただの人斬り集団に何ができる、と。 根本的に違うから仕方がないと言えば仕方がないが、土方はそれが気に入らないらしい。 「……では、俺と飲みませんか?」 「お前とか?随分と珍しいこと言うじゃねぇか」 「ははっ。いつもは何がなんでも連れてきますからね。まぁ、気分なんです。飲みたい気分」 .
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

38人が本棚に入れています
本棚に追加