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中島降、それが男の名前だ。
中島は土方の隣に行くと、足元に置いてあるビールを見た。
中身は、あまり減っていなかった。
「……なんだよ」
その様子を見ていた土方の不機嫌そうな声を聞き、慌てて顔を上げた。
彼の頬は僅かに赤くなっていて、酒弱かったっけ?と首を傾げたくなった。
「で、なんだ?敵さんになんか動きでもあったか?」
「あっいえ、そういうわけでは……。榎本さんが軍議をしたいから呼んでくるように、と」
「ちっ。何が呼んで来いだ。どうせ俺が行ったって意見なんか聞き入れねぇくせによ」
土方は幕府軍の中では軽視されていた。
江戸での活躍は知っているだろうに、自分のプライドのために素直に土方を受け入れようとしないのだ。
ただの人斬り集団に何ができる、と。
根本的に違うから仕方がないと言えば仕方がないが、土方はそれが気に入らないらしい。
「……では、俺と飲みませんか?」
「お前とか?随分と珍しいこと言うじゃねぇか」
「ははっ。いつもは何がなんでも連れてきますからね。まぁ、気分なんです。飲みたい気分」
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