球技祭の憂鬱

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「おい雄梧、…ハマサキさんはどうした?」 とヤスが言った。 何の事だろう。 僕が黙っているとヤスは何度か頷いて 「あぁ…まぁ、いいや。気が向いたらグラウンドにでも来いよ。黒ティーには話しとくから」 と言った。 黒ティーは僕のクラスの担任で野球部の顧問をしている。 ハマサキさん? ヤスの知り合いだろうか。 校内は全学年による球技祭の最中で 今年の男子はソフトボールとバスケットボール、それからサッカーがその種目で、僕のクラスはソフトボールとサッカーに分かれて参加している。 これから3年生のクラスとソフトボールの試合がある。 気が向くも何もこれからすぐにグラウンドだ。 僕の通う高校は一応進学校だが、 熱心に受験勉強をしている者はまだそんなに多くはないように思う。 他の高校もこうなのだろうか。 それぞれが気ままに、のんびりと学校生活を送っているように見えるが、 どこかぎこちなさのようなものを僕は感じていた。 おそらく世界的に流行している突発性精神分裂病、通称『ロスト』のせいだろう。 爆発的に感染(感染するものなのかは定かではないが)が広がっており、現在世界中で100万人以上がロストを発病させている。僕は他の人より少しだけロストについては詳しい。ロストという病気の存在を知ってからかなり深くそれについて調べていたからだ。
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