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東北新幹線は始め、大宮から発着していた。 そして上野から。やがて東京始発となった。 上野駅の構内は、小綺麗な店が並んでいるのにもかかわらず、昭和の残り香がするような気がするのはなぜだろう。 私はお茶のペットボトルを自販機で買い、座席に座る。 あら、あれはないの? お茶のパックが入ってる、熱いやつは? 今時そんなの売ってないから。 笑う私を、母は不機嫌そうに見る。 あれがないと、電車って感じがしないわねぇ。 ねぇ、窓は開かないの? お弁当は売りに来ないの? 母は昭和が服に袖を通しているみたいな人だ。 なんだか象徴的。 何百キロで走る新幹線だから、窓は開かないでしょ。 駅弁をかかえた売り子さんがホームを歩いている時代は過ぎてしまっている。 お弁当は、もったいないから作ってきたんじゃない。 おにぎりだけどさ。 こうして新幹線に乗ってでかけるのだって、急な出費なんだから。 ,
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