1

4/4
前へ
/19ページ
次へ
そうねぇ、せっかくだから、温泉に行きたいわねぇ。 母は、患ってから温泉が好きになった。 ひどく多弁になったし、人とのかかわりをさけているようであったのに、人懐こくなった。 そのかわり、人の話を聞かないで、自分の話ばかりする時があった。 私は仕事があるから温泉には寄れないと言った。 母は残念そうだった。 新幹線の中で母はおとなしかった。 乗り物酔いをする人だからかもしれない。 私は、ペンギンの絵が入ったエプロンをつけた売り子さんから、 缶ビールを買ったり、笹かまぼこを買ったりして飲み食いしていた。 やぁねぇ。おやじじゃないの、あんた。 飲まなきゃやってられない時もあるでしょ。 母は呆れた顔をした。 私には楽しんでるように見えるけどねぇ。 状況は楽しまないと? 私は、母のお茶のペットボトルに缶ビールをあてた。 乾杯。 ,
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加