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惣一郎は、物心つく前に両親を亡くし、それからこの老夫婦の下で暮らしてきている。
彼の一族は、代々陰陽師一家である。陰陽師というのは、その昔妖怪を退治する聖者として重宝されていた。
しかし、時代が進むにつれて妖怪もおとなしくなり、陰陽師も廃れていった。
そして、そのうち存在すら忘れ去られ、現在残っているのはこの沖田一族ぐらいだろう。
修行を終え、夕食を摂り、入浴を済ませた惣一郎は、一人で客間にある仏壇に手を合わせていた。
「おやすみ、父さん母さん」
惣一郎は、寝る前と学校に行く前には必ず仏壇に向かって手を合わせる。
すでに亡き両親に、せめてもの親孝行と思ってのことである。
黙祷を済ませ、自分の部屋に行き布団に入る。そして、
「絶対修行とか意味ねぇよなぁ」
と、つぶやきながら眠りに就く。
これが惣一郎の日常だった。
しかし、裏で確実に動き始めていた闇によって、皮肉にも源内の修行は、運動神経以上にすごく意味のあるものになってしまうのであった。
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