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惣一郎は源内に大入道のことを話すと、
「それについても心配はいらん。ちゃんと手配はしておる。それにやはり今は奴らの気配が感じられん。日が暮れん限りはどうにもならんよ……」
惣一郎を落ち着かせるような口調で言った。
「やっぱりか……。じゃあ、皆夜になるまで待機か」
惣一郎は源内の意見に納得の意を示した。
「いや、お前は夜になっても待機じゃ」
源内は淡々と言った。
「えっ、なんでだよ!?俺だって……」
惣一郎も動揺が隠せない。
当たり前だ。自分はこの時の為に頑張ってきたのではないか、そう思ったからだ。
「駄目じゃ。お前に戦わせる訳にはいかん」
そんな気を知ってか知らずか、それでも源内は意見を変えない。
「はあ!?訳分かんねぇよ!そういやじいちゃん、前もそんな事言ってたよな!そのくせ毎日修行修行って一体何なんだよ!?」
惣一郎も遂に声を荒(アララ)らげる。
「…………」
「……もういい!!」
口をつぐむ源内を見て、痺れを切らした惣一郎は、その場から荒々しく立ち去った。
「惣!どこ行くの!?」
そんなウメの言葉を背中で聞きながら。
惣一郎は、近くの公園のベンチに横たわっていた。
「はぁ……。何で俺は戦っちゃ駄目なんだろ……」
怒りは収まり、冷静さを取り戻した惣一郎だったが、こちらと言えば家を飛び出してきた身だ。
当然、多少なりとも帰りづらさはあり、なかなか帰れずにいた。
そうこう悩んでいるうちに、気付くとすっかり日は暮れていた。
「やべっ、もう帰らな……」
そう焦った瞬間、惣一郎の頭に源内のあの言葉が蘇った。
「……いや、帰っても待機してろって言われるだけだ。どうせならここに居よ……」
そして、またベンチに横になり、拗ねている惣一郎をよそに、街ではすでに大バトルが繰り広げられていたのだった。
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