音の怪・前編

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七基は何が起きているのか、全く分からなかった。 それでも、目には見えない何かを、鎖が捕えている事だけは把握出来た。 「家人の許可なく敷地に入るとは何事か」 灯色が呟いた。 見えない何かに言ったようだ。 見えない何かは、鎖から逃れようとしているのか、抗っているように鎖が軋む。 ゴッ…!! 地面が陥没した。 ゴッ…!! ゴッ…!! 地面の陥没が七基に向かって、徐々に近付いていく。 「十六夜の巫!」 灯色が叫ぶと、七基のポケットから光が飛び出し、見えない何かを、店の外まで吹き飛ばした。 ふわりと光が戻ってきて、灯色の手の中に収まり、火が消えるように紙になった。 七基が拾った十六夜の巫と書かれた、あの紙だった。 「逃げられた…」 灯色は呟き、座っていた場所まで戻って、また本を読み始めた。 「…もう大丈夫じゃよ」 老人が笑って言う。 「あ、あの…あれは何なんですか?灯色くんって一体…」 七基は戸惑いを隠せない。 「はてな。灯色。灯色や」 「はい?」 「娘さんにも説明してくんろ」 老人が言うと、灯色は本を置いて、二人がいる座敷に上がった。
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