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七基と灯色は、座敷で向かい合って座っていた。
老人が奥から、お茶を持って来て、二人の前に置く。
「先ずは自己紹介が先かの」
老人も座り、自分の分のお茶をすする。
「儂はこの店の主人で、三坂大樹と言う。見ての通り、ただの老いぼれじゃ」
そう言って笑う。
「私は…七基茉里です。仲門高校の一年生です」
「おお。仲門か。頭いいんじゃの」
「いえ、そんな事は…」
三坂の言葉に、素直に照れる七基。
「僕は立花灯色と言います。今は三坂さんの食客です」
灯色が言った。
「灯色は不思議な力を持っていての。先月も儂の店に出た物の怪を、退治してくれたんじゃよ」
「物の怪…あの音も、物の怪なの?」
七基の問いに、灯色は首を横に振った。
「あれは…多分、悪霊だと思います」
「悪霊…?」
「死んだ人の霊です。何かの理由で、または理由もなく人に禍を齎す…そう言う負のものを悪霊と呼びます」
「何で、私を追い掛けてくるの?」
「…何処かで噂しませんでしたか?霊は話をしただけでも、寄って来ますから」
「それ…だけの理由で?」
「十分な理由です」
灯色は言った。
「儂の時のように、どうにかならんかね」
三坂が言った。
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