音の怪・後編

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「簡単です。お祓いに行けば良いんです」 「灯色くんは、お祓い出来ないの?」 「出来ません。僕は力があるだけで、使い方は全くの素人です。急を要する時にしか力を使わないようにしてるので、やっぱり本職の人にお祓いしてもらった方が、良いと思います」 「でも、お寺に行かないといけないんでしょう?その間に悪霊が来たら、どうしたら良いの?」 七基が不安そうに言うと、灯色は一枚の紙を差し出した。 「十六夜の巫」 灯色が呟くと、紙が光り、小さな丸い鏡になった。 取っ手は無かったが、代わりに左右に紐飾りがついている。 「守りの鏡です。もし悪霊が来ても、守ってくれます」 鏡を受け取り、七基はそれを見ていたが、灯色に向かい直し、 「あの…一緒に来てほしいって言ったら…迷惑?」 と、尋ねた。 「いつ頃ですか?」 「明日の…朝かな。早い方が良いから」 「残念ですが、バイトがあります」 「休めんのかね?」 「それはちょっと…。仕事なので」 灯色が困ったように言う。 灯色は高校には行かずに、既に働いているのだ。 アルバイトであっても、仕事は仕事。 無責任に休む事は出来ない。
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