音の怪・後編

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朝、一番に三坂邸を出たのは、バイトに行く灯色だった。 次に三坂が起きて、店の戸を開ける。 そして、歪んでいる事を忘れていた戸を直してもらう為に、業者に連絡を入れた。 そして、七基が起きてきた。 「あの、お世話になりました」 ぺこりと礼をして、七基は言った。 「また来てくれろ」 三坂が微笑んで言った。 日が昇って明るい事もあり、七基は意を決して、三坂に教えてもらった寺に一人で行き、事情を話してお祓いを頼んだ。 「おや。お嬢さん、何か神聖な物をお持ちだね」 「え?」 「守護の力を感じます。とても強い守りの力です」 「あ…」 灯色から受け取った鏡を思い出した。 「此処でお待ちください」 広い部屋に通され、その下座に座る。 上座の方に仏像があり、僧がその間に座った。 「お嬢さん…。実を申しますと、法力を持つ僧は年々減ってきているのです」 「え?」 「浄霊出来るだけの僧は、この寺にもう一人しかいないのです。かく言う私も、修行を続けて早十数年…今だ、その方の足下にも及ばない程度です」 「あの…そう言う事を言われると、不安になるんですけど…」 七基は言った。
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