音の怪・後編

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七基は立てなかった。 座り込んだまま後退る。 カツン… 「いや…」 カツン…カツン… 「いやぁっ!!」 恐怖が押し寄せてくる。 後退る七基のポケットから、小さな鏡が落ちた。 「あ…」 お守りの鏡。 灯色はこれを何て呼んでいただろう。 鏡を拾い上げる。 「お願い…助けて!!」 ぎゅっと抱き締めて、その名を呼んだ。 「十六夜の巫!」 抱き締めた鏡から光が溢れた。 フワリと七基を包みこむ。 カツン… 音が怯むように、その場に止まった。 「す、凄い…」 僧達が呟いた。 カツン… 音が七基から離れた。 カツン…カツン… 「お、おい。此方に…此方に来るぞ!」 僧達が叫んだ。 「駄目!十六夜の巫、皆を守って!!」 光が七基を離れ、僧達がいる辺りを全て包んだ。 「なっ…!?お嬢さん、駄目です!それでは貴方が…!」 カツン… 音がまた七基の方に向く。 「う…」 「お嬢さん!」 仕方がないと、七基は思った。 僧達の殆んどが、怪我で動けない。 そして、本当は何の関係もないのだから。
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