音の怪・後編

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カツン…カツン… どんどん近付いてくる。 カツン… そして、目前まで来た。 「お嬢さん…!」 僧が叫ぶ。 七基はギュッと目を閉じた。 「芦原の神!」 声と共に、空気を引き裂く音がした。 七基は目を開けて、目の前に立つ人物を見る。 其処にいたのは灯色だった。 「どうして…バイトは?」 「お皿の割り過ぎでクビになりました」 「えぇ?」 七基は恐怖も忘れ、すっとんきょうな声を上げる。 「店長の肘が当たった性なのに、僕がクビですよ?身勝手な人って本当に困ります」 灯色が一歩前に出た。 「身勝手な霊も困ります。神聖なお寺を壊すなんて、罰当たりな!」 ゴッ…!! 灯色の足下の、直ぐ目の前が陥没する。 「五月雨の楔!」 翳した紙から鎖が現れ、意思があるように悪霊を捕えた。 「芦原の神!」 もう一枚の紙からは刀が現れる。 七基が初めて見る、本物の刀。 反りの全く無い、無反りの刀だった。 その刀で斬り掛かる。 空気を引き裂く音がして、更に地を切り裂いた。 「外した!」 ゴッ…!! 激しい音がして、灯色の手から刀が弾き飛んだ。 「其処か!」 再度、鎖で縛る。
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