音の怪・前編

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それは何処にでもあるような、些細な怖い噂が始まりだった。 「追い掛けてくる音?」 七基は初めて入った小さな喫茶店で、バニラアイスを食べながら、友人の言葉を繰り返した。 「なぁに?それ怪談?」 「本当にあった話なんだって。一人で道を歩いていると、後ろから物音がして、それがついて来るように聞こえるんだけど、振り返ると誰もいないんだよ。でね…」 「気の性かと歩き出すと、また音が聞こえる…とか何とか言うんでしょ?誰から聞いた話よ。それ」 「先輩が友達の友達に聞いたって」 「ベタねぇ」 七基は呆れた顔で呟いた。 「茉里って、こういう話信じないよねぇ。人生楽しい?」 友人が茶化す。 「それなりにねぇ」 七基が笑いながら答える。
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