音の怪・後編

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その間に刀を拾いに走る。 が、悪霊は鎖から逃れて、灯色を追い、攻撃してきた。 ゴッ…!! ゴッ…!! 攻撃を間一髪の所で避けながら、灯色は振り返った。 まだ刀まで距離があるのにも関わらず、丸腰で音と対峙する。 灯色が不敵に微笑んだ。 「紫水の針!」 現れたのは槍。 ダンッと、力強く地を踏み、勢い良く突きを繰り出す。 叫び声のような音が木霊した。 ぶわっと、生暖かい風が吹き、やがて空に消えた。 「芦原の神。十六夜の巫。紫水の針。五月雨の楔」 刀が、鏡が、槍が、鎖が、灯色の回りに集まると、小さな光になって灯色の手の中で紙に戻った。 「灯色くん!」 七基が灯色に駆け寄った。 「ありがとう!ありがとう、灯色くん!」 そして抱きつく。 「なっ、七基さん!?」 灯色が真っ赤になって狼狽えた。 「ありがとう…ありがとう…」 七基は泣きながら、繰り返し言った。 「えっと…帰りましょうか?」 「うん。でも…」 怪我をした僧達が気になる。 「どうぞ、お気になさらずに。我々の修行が足りなかったのです」 僧が微笑み言った。 「…お世話になりました」 七基は礼をした。 これで、全て終わったんだ…。
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