そして、始まり…

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数日後…。 七基は古本屋の前に来ていた。 歪んでいた戸は、もう直っている。 「こんにちはー!」 「おお。いらっしゃい」 店の中に入ると、白い髭の老人が迎えてくれた。 彼は三坂大樹という、この店の店主だ。 相変わらず、良く分からない本が並んでいるけれど、七基は此処に来るのが、当たり前になりつつあった。 「灯色くん?また本読んでるの?」 いつも奥の座敷で、本を読んでいる少年がいるのだが、今日は寝転がっていた。 「あれれ?」 「徹夜しとったからの」 三坂が言った。 「ふふ。本当に本が好きなんですねぇ」 「本の虫じゃの。ところで、お友達は元気になったかね?」 「はい。まさか、友人も灯色くんが助けてくれていたなんて…驚きです」 友人は七基の前に、あの音に襲われていたのだ。 それを偶然、通り掛かった灯色が助けたものの、頭を強く打っていて、そのまま意識不明になってしまったらしい。 今は意識も戻って、すっかり良くなっている。 「でも、あの音の事も、灯色くんの事も、夢だと思い込んでるんです」 それを聞いた三坂が寂しそうに微笑んだ。
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