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「今は何とも無いよ。もう、物の怪退治したらしいから」
「…って事は、噂は本当だったんだ?」
また失言したかもしれない。
「私もう帰るね!また明日!」
七基はこれ以上、何も言わない内にと、その場を逃げ出すように、友人達と別れた。
そして、いつものように花月堂に向かう。
「こんにちは!」
店に入ると、三坂が七基を出迎えた。
「いらっしゃい」
三坂が微笑んで言った。
「あ、七基さん」
ちょうど本を読み終えたのか、奥から灯色が出てきた。
「…七基さん、天邪鬼が憑いてますよ」
そう言って、七基の肩の上を指先で弾く。
すると肩が少し軽くなった。
「もう大丈夫」
「あ、ありがとう」
「今日は大変だったでしょう。天邪鬼は余計な事を言わせて、人を困らせる物の怪ですから」
「うん。失言しまくりだった」
七基が苦笑する。
「あ、そうだ。灯色くんって、クッキー好き?今日、実習で作ったんだけど、良かったら」
「わぁ。ありがとうございます。僕、甘いもの好きなんです」
灯色が嬉しそうに言う。
「青春じゃのぉ」
二人をほのぼのと見ていた三坂は、優しく微笑んだ。
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