七基の友人・幸せの少女

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山部は灯色に、先程の話を繰り返して説明した。 「気の性では無いんですか?」 灯色が言った。 「…これを見てください」 山部は持っていた鞄から、古い日本人形を取り出した。 「あ、まさか髪が伸びるの?」 「いや。いつも階段の踊り場に置いてあるんだけど、朝になると…いつの間にか落ちてたりして、一昨日は俺の部屋に…」 「勝手に移動してるって事?」 「怖くなって、捨てたんだ。だけど今日の朝、戻ってきた」 灯色は人形を抱えて、見つめていたが、山部に差し出した。 「捨てない方がいいと思います」 「悪霊が憑いてるから?」 「いいえ。その逆です。それに憑いてるのは…座敷童です」 「座敷童?」 「小さな子供の姿をした物の怪です。人の家に好んで憑き、その家の住人に幸福を齎す。大事にすればするほど、家が栄えますよ」 灯色は人形についていた埃を払った。 「…座敷童がいる家に、悪霊が出るなんて信じられません。本当に霊障が起きるんですか?」 灯色の問いに山部が頷く。 「…行ってみましょうか」 灯色が言った。 山部の家は、昔ながらの日本家屋だった。 「立派なお屋敷だねぇ」 七基が言った。
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