七基の友人・幸せの少女

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「それにしても…家でなく、人を守る座敷童ですか。余程、好かれているんですね。座敷童は本来、家から家へ渡り歩くものなんですよ」 灯色は頭が痛むのか、フラフラしながら言った。 ガンッと、箪笥に体を打つけてしまう。 「大丈夫か?」 「ええ。まぁ…」 しかし灯色は、部屋を出た所で、座り込んでしまった。 「お、おい…」 山部が心配そうに言った。 「大丈夫、です。ちょっと…血が足りないだけ…」 灯色が呟く。 玄関の方から山部を呼ぶ声がした。 「久史ー?帰ってるのかー?」 山部の父親が帰ってきたのだ。 「待ってろ!親父呼んでくる!」 「灯色くん…」 七基が不安そうに言った。 「大丈夫です。七基さん…」 山部が父親を連れて戻ってきた。 「ど…どうしたんだ。一体…」 父親が呟く。 「…取り合えず下へ。ちゃんと処置をしないと…」 そう言って、父親は先に下りていった。 「歩けるか?」 山部の問いに、灯色は頷いた。 「芦原の神、五月雨の楔」 灯色が名を呼ぶと、刀と鎖は紙になり、灯色の手元に戻った。
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