七基の友人・彼氏騒動

3/11
前へ
/77ページ
次へ
山部の父親に送ってもらって、七基は自宅へ、灯色は花月堂の前に戻ってきた。 「…今日は息子が世話になったね。ありがとう」 「いいえ。そんな事はありません」 「もし傷が悪化したり、気分が悪くなったりしたら、いつでも言ってくれ。こう見えても、私は開業医なんだ」 「ありがとうございます」 別れを告げて、車は走り去る。 それが見えなくなるまで見送ると、灯色は頭の包帯に手を伸ばした。 そして、何の躊躇いもなく、スルスルと包帯を外していく。 包帯を外し終えると、傷口のガーゼを剥がした。 乾いた血がパリパリと小さな音を起てる。 包帯とガーゼをポケットにしまうと、花月堂の中に入って行った。 「おお。おかえり、灯色」 灯色の帰りを待っていた三坂が、灯色を見て笑った。 「…ただいま」 「どうだったかの?何処も怪我はしとらんかの?」 「ええ。大丈夫です。危ない事はしてないですよ」 そう言って、微笑んだ灯色の頭の傷は、跡形も無く消えていた。
/77ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加