七基の友人・見えるひと

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「何処かでお会いしました?」 灯色が首を傾げる。 「ほら。隣町のファミレスでバイト一緒だった白石ッスよ」 「隣町の…?ごめんなさい。他の従業員さん覚えてなくて…」 「まぁ、印象薄いッスから。俺」 白石が笑う。 「あ、その自動販売機で買うより、向こうの自動販売機の方がお得ッスよ」 「ご親切に、どうも」 山部がお金をしまう。 「それより、気を付けて下さいッスね。此処、出るらしいッスから」 「出るって…痴漢が?」 灯色が言った。 「いやいや、幽霊ッスよ!」 仮にも霊能力者が、出ると聞いて、幽霊より先に痴漢かと尋ねるのはどうなんだと、山部は密かに思った。 「女の幽霊が出るんッスよ。何でも、この店の前で事故に遇った女が、気づくと恨めしそうに、後ろに立ってるとか」 「…亡くなった人の事を噂しない方が良いですよ。残された親族の人が悲しみます」 「立花さん、冷静ッスね」 白石が感心したように言う。 「こらー。白石、仕事しろー」 「わっ!やべっ!じゃあ、立花さん。ごゆっくり!」 白石はバタバタと仕事に戻って行った。
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