音の怪・前編

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帰り道、その異変に気づいたのは、辺りが暗くなった頃だった。 カツン… 小さな音だった。 カツン…カツン… 繰り返し聞こえてくる音に、七基は首を傾げた。 振り返って見るが、何もない。 誰もいない。 「おかしいな…。この時間なら、まだ散歩してる人とかいるはずなのに…」 カツン…カツン… 誰もいない。 音だけが聞こえる。 「う…そでしょ…?」 これって…昨日、友人が言ってた、追い掛けてくる音の話みたいだ。 カツン、カツン…。 気の性だと自分に言い聞かせながら、七基は早足で歩く。 カツン… 音が止まる。 七基は立ち止まって、そっと振り返り、聞こえなくなった事に安心したのも束の間… ゴッ…!! と、物凄い音がして、目の前の地面が陥没した。 「ひっ…!」 七基は恐ろしくて、その場から走って逃げ出した。 カツン…カツン… カツン…カツン… 音が追い掛けてくる。 「や、やだ…!」 七基は全速力で走った。 カツン…カツン… 追い掛けてくる音から必死で逃げる。 「誰か…っ」 助けを求めたくても、周りには誰もいなかった。
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