音の怪・前編

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走っても走っても、その音が止む事は無かった。 「あっ…!」 七基は石につまづいて転んだ。 カツン…カツン……ゴッ…!! 倒れた七基の足下の地面が陥没する。 「い、いやぁっ!!」 立とうにも、力が抜けてしまって、立ち上がれない。 必死で後退る。 カツン… 音が近づいてくる。 カツン… また近づいてくる。 七基は恐怖で目を固く閉じた。 カツン… そして音が止まった。 「芦原の神!」 突然、人の声がした。 空気を引き裂くような音がして、激しい風が吹いた。 カツン…カツン… 七基を追い掛けてきた音が遠ざかる。 七基は恐る恐る目を開けた。 誰もいない。 音もしない。 「何…」 アスファルトの地面が裂けていた。 「何だったの…!?」 七基は暫くその場を動けなかった。 ようやく立ち上がった七基の服から、ふわりと何かが落ちた。 一枚の紙だった。 拾い上げて見てみると、紙には不思議な模様が描かれていて、お札のように見えた。
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