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七不思議の怪談では、体育館の倉庫に一人で入ると閉じ込められ、男だったらバラバラ切り裂かれ、女だったら腹を裂かれる。
過去にそんな事件が有った訳でもないし、在校生が死亡した事も無い。
なのに、そんな残酷な怪談が、この学校に存在している事こそ、不思議な話だ。
「体育館…真っ暗だね」
七基が呟く。
扉を開けて、恐る恐る中に入った。
体育館の倉庫は、入口の真正面…つまり広い体育館を、縦断しなくてはいけない。
歩く度に、靴音が不気味に木霊する。
頑丈で少し重い鉄の倉庫の引戸を、恭也が開けた。
「異常無し!」
暗くて不気味ではあるが、其処はいつもと変わらない倉庫であった。
「はぁ。良かったぁ」
「そうね…怪談通りの化物が出てきたら、さすがに怖いものね…」
景子が言った。
「じゃあ、戻ろうぜ」
「うん」
七基と恭也が倉庫を出る。
「…気になることが有るのだけど…」
景子が呟いた。
「え?なぁに?」
「七不思議って、本当に…」
そう言い掛けた景子の姿が、突然現れた壁の向こうに消えた。
「え…!?」
現れた壁は、倉庫の引戸だった。
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