無限回廊

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鉄の重い引戸が、独りでに閉まってしまったのだ。 「け…景ちゃん!?」 七基が引戸を開けようとしたが、ビクともしない。 「開かねぇ!さっきは開いたのに!!」 恭也が力一杯引っ張っても、開く気配が無い。 「どうしよう!?灯色くん!…あれ??灯色くん!?」 隣にいたはずの灯色が、いつの間にかいなくなっていた。 「どうなってんだよ!?」 恭也が叫んだ。 「二人とも落ち着いて…。私の方は何とも無いわ」 引戸の向こうから、景子の声がする。 「灯色くんは恐らく、追い出されてしまったのよ。彼、強そうだもの。私は大丈夫だから、どうにか帰る方法を探してきてちょうだい。あまり長居はしたくないわ」 「誰か呼んでこよう!」 「うん!景ちゃん、待っててね!」 七基と恭也は、グランドに向かって走る。 「…大丈夫かしら」 一人残された景子は、不安そうに呟いた。 グランドに出た二人は、更にパニックを起こしそうな光景を見て、茫然と立ち尽くした。 「うっそ…何だこれ…」 グランドには誰もいない。 しかも、グランドを囲うフェンスの向こう側に、在るべきはずの町並みが消え、真っ黒な空間が広がっていた。
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