10人が本棚に入れています
本棚に追加
金属同士が打つかり合う嫌な音がした。
倉庫の引戸がへしゃげ、鎌が突き刺さっている。
「あら…戸を切り裂くのは、無理だったみたいね。残念だわ…」
引戸を切り裂いて貰い、あわよくば、そのまま脱出してしまおう…と踏んでいた景子は、ため息混じりに呟いた。
怪人は戸から鎌を抜き、景子の方を振り返る。
景子は無表情で、怪人を見ていた。
「…私、少し可笑しいかしら。貴方を怖いと思わないの。ごめんなさいね…」
寧ろ、絶体絶命の状況なのに、落ち着いている自分の方が怖い。
パタパタと足音が聞こえた。
「景ちゃん!大変なの!」
七基の声がして、景子は漸く狼狽えた。
「来ては駄目よ!」
そう叫んだ直後、倉庫の引戸が勢い良く開き、遮断されていた空間が繋がった。
怪人は倉庫から体育館に移動する。
「…しくじったわ」
景子が呟く。
「え!?何…体育館の怪人!?」
「景ちゃん!」
「大丈夫よ…。それより、怖いと思っては駄目よ。これは多分、夢だわ」
「夢?」
七基が驚いた。
自分達もそんな話はしたけど、あれは冗談で言っただけで、本気で夢だとは思ってなかった。
最初のコメントを投稿しよう!