音の怪・前編

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そして真ん中に文字。 「十六夜の…巫?」 意味は分からなかった。 七基はその紙を折り畳むと、ポケットに仕舞う。 何故、そうしたのかは分からない。 でも、守ってくれそうな気がした。 家に帰ろうと歩き出したが、七基は直ぐに立ち止まった。 家までは、まだ距離がある。 一人で帰るのは心細く、怖かった。 考えたのち、七基は走り出した。 そして、昨日の古本屋に駆け込んだ。 知っている場所で、一番近いのが、この古本屋だったからだ。 「おや。昨日の娘さんじゃないか…。どうしたんだい?慌てて」 「あ、あの…私…」 震える声を絞り出して、先程あった事を説明しようとするが、どう説明したら良いのか分からず、七基は泣き出してしまった。 「おやおや…。どうしたんだい?痴漢でもいたのかい?」 「怖かった…怖かったの。ごめんなさい。どう言えば良いのか分からないっ…!本当に怖かったの…」 「よしよし。此処なら大丈夫じゃよ。灯色が戻って来たら送らせよう」 七基は首を横に振る。
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