音の怪・前編

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「嫌…外に出たくない…。外は怖い!外に出たら、また追い掛けてきそうで…!」 七基は泣きながら、頭を抱える。 「ただいま…」 灯色が店に入ってきた。 七基を見て、何故か驚く。 「おお、灯色か。お帰り。昨日の子が来たんじゃが、何かに脅えておってのぉ」 「家に連絡して、迎えに来てもらえば良いですよ」 「おお、そうじゃな。それが良いじゃろうて。娘さん、お家の人は…」 七基は首を振った。 「…今日は、遅くなるって言ってました」 七基の家は母子家庭で、兄弟はいない。 今帰っても、家に一人きり…。 普段はそれでも平気だが、今のこの状況で一人きりになるのは、恐ろしく思えた。 「家には誰もいません」 「何と…。困ったの」 老人が呟いた。
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