好き!

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軽く世間話をする。本題を避けるように。そんな会話は俺の何気ない一言で一転した。 「美咲、好きだよ」 いつもの言葉。この始まりの言葉は、美咲の勇気の引き金を引いた。 「みさ達は絶対幸せになれないよ」 「え?」 「やっぱりなんでもない」 「なんだよー」 その後俺のしつこい押しに負け、美咲は本題に入った。 「ねぇ俊樹、みさなんかよりいい人見付けて?」 「なんだよいきなり」 「だってさ、このままじゃお互いに絶対幸せになれないよ。 みさはいいけど俊樹はもっといい人いるから」 時には涙を含んだ何度も聞く台詞。しかし今日のはひどく重く感じられた。 「だって逢えないじゃん。 気持ちだけで解決できないよ」 距離の問題。美咲が悩み続けた問題。 「だから逢いに行くって」 「いつになるんだろうね」 冷たく突き刺さる声。美咲は今自分を押し殺している。 「だから……ね?」 「嫌だよ……そんなの。 なんとかなるよ」 絶対言わない、別れるなら泣いたり、嫌だとか言わないつもりだった。ありえないと思っていた。 けど、実際なってみると言っちまうもんだな。 「隣の県とかならよかったのにな……」 呟くように話す美咲。吐息からは涙が伺えた。 「隣の隣じゃんか」 「でも遠いよ」 「じゃあもし……」 そこで言葉を失った。もし、つまりイフの世界。それを話すのはやめよう。無駄なことだから。話してしまうと悲しくなりそうだったから。 声の代わりに涙が出た。 「泣かないで?」 「違うよ、目から汁が出てるだけだよ」 「しっかりして。 カッコ悪いぞ」 吐息で読み取れたのだろう。情けないと自分でも思う。 「アニメ以外で泣いたことねぇぞ。 すごいな、気持ちって。 もし近かったら?」 「近かったら、変わってたのかもね。 みさ達は運命だったよ。 でも距離があって、神様は意地悪だったの」
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