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「あれ……おかしいな。
汁が止まんないや……あはは」
「もう……ばか」
長い沈黙。とても長い沈黙。本当は短い沈黙だったかもしれない。けれど長く感じた。横で流れるテレビの会話など聞こえない。
「俊樹のこと嫌いじゃないんだよ?
勘違いしないでね?」
「わかるけどさ。
なんか言葉が出なくって……」
涙が止まらない。
「みさは俊樹の夢を応援できない。
現実的だから、冷たいの。
応援してくれる人を見付けて。
友達なら応援できるから」
「そっか。
応援……できないんだっけ」
そこで一度落ち着いた涙が流れ出る。今の現状を考え直すだけで心を荒らし、ほじくり返されたように乱される。それによって無意識に涙が溢れ、顔やその下、携帯さえも濡らしていく。
「逢えるよ。
絶対なんてないし、無理だとしても、ずっと好きでいる」
「逢えないよー。
こっち住む?」
「住む」
「お金もったいないよ」
「人生何年あると思ってんだよ。
長いぞ?
あと確実に40年はあるな」
「でも40年後に逢いたくないよね」
「若い時に逢う」
長く、そして短い幸せな時。
永遠なんてない。
始まりには終わりがある。
何度も考えていたことも、好きだからこそ納得できない。美咲が何を考えているか、今ならなんでもわかる気がした。
いや、知っていたんだ。今までも、そしてこれからも。運命が決めていたんだから。
「お互い嫌いで別れられたら幸せなのにね……」
なあ運命さんよ。運命を変える、それすらもお前が知っていることなら。俺達がこうなるのも知ってたんだよな?だったら逢わせるなよ……って言いたくても言えないじゃんか。幸せだったんだから--
「--好き、だよ」
電話を切ってから呟く。運命への問い掛けは誰も答えてくれない。好きなのに結ばれなくて。
さよならを言えなくて。
俺はしばらく心にぽっかり穴が空いたように放心状態だった。
好きだよ。さよならができない。これからも友達。君との思い出をずっと忘れない。あの日君は僕よりも泣いていたのかもしれない。
どんな言葉がいいんだよ……
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