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断片的にしか聞こえなかったけれど、心を掴まれるには充分だった。 この耳でも微かに聞こえてよかった・・。 その音を求めて私は走り出した。 全神経を左耳に集中させる。 近づいていくにつれて、私の一番好きな曲だと知る。 全体的に甘いメロディアスな旋律。 だかど、どこか寂しげなそれは 月夜によく合っていた。 どうやら音は校舎の最上階にある音楽室からのようだった。 ―ガタッ!! 階段を昇りきり、角を曲がれば音楽室というところで、角にある消火器に躓いて大きな音を立てた。 察知したように音色がピタリと止んで、変わりに足音が扉の方へ向かってくるのがわかった。 やばい!!! 何故かそう思ってすぐさま半階段降りて階段の壁に身を潜めた。 ガラガラと勢いよく扉が開いて 「・・誰だっ!!?」
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