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それにしても、この朝のミーティングは長いな、とぼんやり考えながら先生の話を聞いているとライが困ったように笑っていた。 どうやらいつもの事らしい。 「ここの担任はいつも話が長くてね、いつも困るんだ」 朝のミーティングが終わりみんなは次の授業の準備をする。 その合間にライが教えてくれた。 「その、HRは毎日あるのか?」 どうやらさっきのミーティングはHRと言うらしい。 「大抵の日は朝と帰る前にあるよ。後は、全学年の生徒や先生が講堂に集まって理事長の話を聞く、朝会って言うのも…」 「ちょーかい?」 「魔界の学園とかにはそういうのは無いからね。最初は僕も戸惑ったよ」 確かに魔界の学園では、HRも朝会もない。 朝の時間はそれぞれが予習をする時間として設けてあるだけだった。 「なんだか面倒だな‥」 リツが戸惑ったように笑っていると、教室の入り口からライを呼ぶ生徒の声が聞こえる。 ライはにこにこ笑いながらその生徒に手を振る。 リツも振り返りその生徒を見た。 「新しく転校生が入ったの?」 本を抱えながら近づいてきた生徒は、リツに笑顔でお辞儀をし、ライにたずねた。 「私は春木サクラ。隣のクラスよ」 サクラは頭の高い位置から結い上げている綺麗な色の髪を揺らしながら微笑む。 「俺は、音羽リツ。よろしく」 リツも笑顔で答える。 サクラは持っていた本をライに渡すと、一瞬困ったように笑ってからすぐに教室から行ってしまった。 ふと、ライを見ると俯いてしまっている。 辺りを見ると、ほかの生徒はサクラが出ていった方を見ながら口々に何かを言っていた。 「……ただの妬みか」 耳をすませば聞こえてきたその悪口。 サクラが羨ましいのだろう。しかし、サクラのように行動が出せないでひがむしかできないようだった。 「どこの世界にもいるんだな‥。卑怯な奴らは……」 ライは静かに頷き、溜息を吐く。 それをただ黙って、リツは横目で眺めていた。
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