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「…赤ちゃん…。…流れちゃったの…。わたし、翔太に…腹を立てて…。翔太に…さよならって…言っちゃったの…。」
涙は…出なかった。
悲しくて、辛くて、寂しくて、切なくて、やり切れない程の気分なのに…。
感情が…コントロール出来ずにいた。
『…。…そうだったの…。』
穏やかに、優しく母は言った。
「わたし…間違ってたのかな?…“さよなら”…言うべきじゃ…なかった?」
いつも毅然としている恵美が、母に弱音を吐く事は、珍しかった。
『…恵美は、頑張る事が出来る…母さんの自慢の娘よ?…間違ってたり…する訳ないでしょ?』
温かい言葉だった。
何よりも母の強さを感じた。
女手一つで育ててくれた母。
甘えたりは出来なかったが、やっぱり頼れるのだと感じた。
「お母さん…。」
『恵美は、どうしたいの?…今、一番…どうしたい?』
穏やかに、母の声が響いた。
「…わたし。…翔太に会いに行かなきゃ!」
衝動的に立ち上がる恵美。
『…そうね。恵美が後悔しない為にも…そうしなさい。』
優しく、温かい母の言葉が、恵美を動かした。
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