古事記の間。

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船が海神の宮へ着くと、海神の娘・トヨタマビメ(豊玉毘売)がおり、トヨタマビメは、ホオリの麗しき壮夫ぶりに、見感(みめ)でて目合(まぐわ)いしたらしいです。 つまり、ホオリとトヨタマビメは結婚してしまったわけですが、ホオリは大そうもてなされ、瞬く間に三年の月日が流れてしまいました。 しかし、ある日ホオリは釣針の事を思い出し、海神の助けもあり釣針を見つけ出しました(鯛ののどに刺さっていた)。 海神は釣針をホオリに渡す際「兄にこれを返す時〈この針は不安の針、貧乏の針、苦しみの針だ〉と言い、後ろ向きになって渡しなさい」と告げました。 さらに海神は「あなたの兄は思うように漁ができなくなるはずだ。もし兄が漁をやめて高い場所に田を作ったら、あなたは低い場所に田を作り、兄が低い場所に田を作ったら、あなたは高い場所に田を作りなさい。わたしは自由に水を操る事ができるので、三年のうちにあなたの兄は貧困にあえぐでしょう。もしこれに兄が怒り攻めてきたら、この玉を使いなさい」と告げ、「塩盈珠(しおみつたま)」と「塩乾珠(しおふるたま)」を与えました。 少し物語から話をそらしますが、この話「浦島太郎」に似てますよね?それもそのはずで、このホデリ・ホオリの話は「浦島伝説」の原型のようです。 海神がホオリに、針を返す際の呪文?を教えた時に「後ろを向いて言え」と言ったのは、日本古来よりある「言霊信仰」によるものです。 というのも、呪術を行なう際「正面を向いて呪いの言葉を唱えると、当然相手に呪いはかかるが言霊の反響により自分にも呪いが跳ね返ってしまう」という思想からきているものです。 それにしても、この兄弟どうにもなんないバカ兄弟ですよね… 兄は兄で頑固すぎるし、いい加減許してやれよって感じだし、弟は弟で、その兄の態度にキレる事なく健気に罪を償ういい奴と思っていたら、海神の宮に行っていい思いをしてしまったら、三年も釣針の事を忘れてしまう始末… オマケに呪いの言葉を伝授され… よくよく考えると、兄・ホデリは最初から道具を交換する事には反対で、弟・ホオリはそれを聞かず針を無くす始末で、落ち込んだかと思えば、楽しさのあまり罪を忘れてしまう始末… ホオリってかなりの気分屋ですよね?だから兄ホデリは最初から道具の交換に反対したのでは?とか思ったりしますが、物語には全く関係ないでしょう。
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