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とある平凡な学校。
僕、松下隆之介はそのすみっこにある部室でマンガを読み耽(ふけ)っていた。
そこはマンガ研究部。
まぁそれは名前だけでほとんどの活動は部員達でマンガを持ち合い語り合う。
たったそれだけの部活。
だけど、その僅かな時間が僕にとって何にも変えがたい幸せな時間だった。
それは、好きなマンガを思い切り読めるから。
…あと。
(大好きな先輩がいるから)
そっと気づかれないようにマンガの影から覗く。
その視線の先。
アニメ雑誌の『アニメージャ』を読む一人の人物がいた。
足を組んで僅かに高くなったそこに雑誌を乗せ、ぱらりとページをめくる。
その動作はさながら可憐な貴族を思わせる。
そう。
彼は僕の先輩で、かっこいい。
名を、浅羽祐希という。
この部室には今二人しかいない。
ほぇ、と見とれる。
祐希先輩の回りだけ空間を切り取ってしまって、違う時限にいる気がした。
そこまでに、かっこよかった。
ほわんと温かいものが、胸いっぱいに広がる。
それが恋心だと気づいたのは、いつだったろうか?
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