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時間を、少しだけ遡ろう。
あれはまだ僕が入学して間もない頃。
一人学校で道に迷い、僕は辺りを見回す。
だけどそんなことをしてもどこか分からない。
(ど、どうしよう…っ!)
思わず泣きそうになってしまい、堪える。
(高校生だろ!しっかりしろっ)
だけど、不安は拭い捨てれない。
広がるばかりの虚無感。
狭いはずの校舎はだだっ広く見えて、僕はきゅぅ、と胸に抱える教科書を抱きしめた。
もう授業が始まってしまうのだろう。
人どころか足音さえ全くない。
助けてもらうにも誰も居ないのでは話にさえならない。
誰もいない。
僕は、今、一人なんだ―…。
そう自覚し、ぎゅっと瞳を閉じた時。
「……君、何年生?」
誰かの声が後ろから上がった。
ばっと後ろを振り返ると、そこには、ベージュ色のカーディガンをだぼっと着た先輩らしき人物が立っていた。
明らかに眠そうにしながらズボンのポケットに手を突っ込んで彼はこちらを見ていた。
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