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「なぁ唯(ゆい)、お前知ってるか?」
いつも通りの、部活を終えた帰り道のことだった。
「…何を」
「最近女子の間で起きてる幽霊騒ぎだよ!」
やけに高ぶった様な声色で、隣を歩む友人──真太郎(しんたろう)は拳を握る。
男子高校生の話題と言えばその大半は恐らく、下らないものだ。
故に、俺の脳内では今回の騒動もその"下らない"カテゴリーへと自動的に分類され、自然と耳から通り抜けていった。
「……でさ!その幽霊ってのがすげぇ可愛いらしいんだよ!」
無駄に熱く語る真太郎は、一回会ってみてぇよな、と惚けては何とも物好きな発言をする。
今度ばかりはその意図を計りかね、俺は単調に地面を蹴った。
「………はぁ…」
小心者のコイツにしては珍しい話をするな、と思えば、やはり女絡みか。
気付かれない程度に、二度目となった重い溜め息を吐く。
モテないのには同情するが、幽霊にまで手を出そうとするその守備範囲の広さには感服せざるを得ない。
いや、むしろその必死さには少々の恐怖も覚える程だ。
「唯、聞いてんのかー?」
「はいはい、聞いてますよっと」
すっかり傾いた太陽は、以前ほどの熱気を発することはなくなった。
近付く季節は少し冷えた風から安易に想像でき、明日からは長袖でも良いかと思案する。
適当にあしらった真太郎の小言を右から左へと受け流しながら、俺はポケットに手を突っ込んだ。
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