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声をあげたのは井本
ナイフは俺の肩を
僅かにかすっただけ
井本が刃を掴んで
軌道をずらしたからだった
「井本!!!何してんねん!!!!」
「え…ぇねん…これで……」
女は信じられないといった表情で
ナイフを離し床にへたりこんだ
「これ以上血出したら死んでまうやんかああぁ!!嫌やぁ井本!!どこにも行かんでくれよ!!!ずっと…ずっと俺の隣りで笑っとってよ…!!!」
「わか…っ…とるや…ろ…俺…も…ぉ…無理や……」
「嫌やあぁあぁー!!!!うっ…ぐっ…うぅ…」
井本はもうほとんど
喋れなくなっていた
それでも何か伝えようと
俺の服をぎゅっと引っ張った
「と……ぃ………と……け…い……
たん…じょ……び…おめ…で……とう……………ぁ…い…して…………」
服を握っていた手が
ダランと床へ落ちた
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