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「・・・佐倉祐司作曲
交響曲〝月の出る夜に〟」
アナウンスの後押しでステージに上がる。
オーケストラとの共演は数年ぶりだ。
ピアニストとして再びステージに立つとは思わなかった。
久々に感じるオケの迫力に、冷や汗が流れる。
『・・・お疲れ様でーす』
「お疲れ様~」
盛大なアンコールを二度ほど終えたホール裏。
そこには、意外にも安堵感が漂っていた。
みんな思い思いのことをしている。
俺も携帯を開く。
思ったとおり、彼女からメールが来ていた。
『お疲れ様☆
かっこよかったよ~実は今日来ていたんだよ、本匠クンと』
(本匠とはまた・・・)
あいつが彼女とそれほどつながりがあったことに少し驚いた。
本匠は俺の親友で、俺達を引き合わせたのも、あいつだった。
『ちゃんと送ってもらえよ。』
あいつが一緒なら、心配ない。
『じゃぁ、バイトに向かうよ。』
そう今日最後のメールを送信して、俺はホールを後にした。
これがたった一つ、俺が毎日彼女にしている、うそ。
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