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ありえない。
あれだけ買いだめしていたアイスが、もう消えてしまった。
一週間前までは、カップアイスが12個、6本入りの棒アイスが2箱もあったはずだ。
俺はいつの間にあんな食べてしまっていたのか。
ただいま午前12時半。
明日は朝5時に起きて出勤しなければいけない。
今日の仕事の疲労が、俺のまぶたにのしかかる。
真っ当な人間なら、明日の仕事へ向けて疲労を追い払うべく、眠りにつくだろう。
しかし麻薬のようにアイスに陶酔し、毎日アイスを食べている俺にとってそれは堪え難いことであって、あえなく俺はサンダルを履いてアパートの階段を降りるのであった。
近所のコンビニは、5~6分も歩けば付く場所に位置している。
そこへ行くには、明かりの切れかけた街灯と、オレンジ色が所ヵ禿げかけ、斜めに45度ほど傾いたミラーがある角を一度だけ曲がる。
まったく……この時間帯にこういう場所はあまり来たくはないな。
薄明るく点滅している街灯には、大小様々な虫が群がり、ミラーには電気を消して寝静まった民家が写っている。
その民家の窓の奥は、まるで黒い生物がとぐろを巻いてじっとしているような、異質で気味の悪い雰囲気を放っている。
俺は猛烈に帰りたい気持ちにさいなまれたが、バニラアイスの濃厚な甘さを思い出して唾を飲み込むことで、なんとかそこを抜けることが出来た。
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