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「…政宗様、また少しお痩せになられたのでは?」
政宗はいわゆる“吸血鬼”と呼ばれる存在だ。
それも今となっては貴重な純粋種の。
最近の吸血鬼は他の種族の血が混じり混血化しているためか、血を吸わなくても生きていけるし、朝日も十字架も怖くない。
だが、純粋種の政宗は普通の食事だけでは生きていけないし、基本的には昼夜逆転の生活だ。
人間と同様の食事である程度の栄養の摂取ができるとはいえ、それでも生き血は重要な栄養源で、摂取しなければ衰弱はまぬがれない―
それなのに。
小十郎は政宗と出会ってから今まで、政宗が血を吸っているところを見たことがなかった。
隠れて吸っている様子もないのだから、本当に吸っていないのだろう。
どれくらいの間、そうなのか?『吸わない』のか『吸えない』のか?詳しいことはわからない。
多分、無理をしているのだろうと思う。
時々、ふいに何かを強く求めるような…それでいて必死に耐えるような…そんな視線を感じるのだ。
小十郎の問いかけに「気のせいだろ」とそっけなく返し再びグラスを傾ける政宗。
「…」
なにかをごまかそうとするかのように目をそらした政宗に小十郎はそれ以上何も言えなかった。
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