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カラン、と政宗にはたき落とされた短剣が床に落ちる。
「…俺が…例え少しでもお前の血を吸ってしまえば…」
小十郎は政宗の眷族となる。
自らの意思を失くし、ただ主の命に従いつくす…いわば生きる屍だ。
そんな血の呪縛で小十郎を縛りたくない。
長い時を独り過ごしてきた政宗を見守り、支えてくれた小十郎だからこそ、自由であって欲しい。
そう遠くない未来、別れは必ず訪れる。
人間である小十郎の寿命は政宗に比べれば当然短いのだから。
できることならこの身が朽ち果てるまで、小十郎と共に居たい。
気の遠くなるような永遠の孤独も小十郎が隣にいてくれるならきっと耐えられる。
だがそれは政宗の我儘でしかない。
だからこそ政宗は、小十郎の血を口にするわけにはいかないのだ。
小十郎には人間として―例えいつか自分から離れてしまうかもしれないとしても―自由に生きて欲しい。
それが今の政宗のささやかな願いなのだから。
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